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パーキンソン病では何故家では旨く歩けないのだろう

氏名 水野 美邦【脳神経内科】
経歴 北里大学医学部神経再生医療学特任教授 順天堂大学名誉教授

パーキンソン病の患者さんは、発症から5~10年たつと、外では上手に歩けるのに家に帰るとすり足で歩く方が多くなってきます。何故でしょう?

踵からついて歩いていれば歩く時殆ど音がでないのに、すり足で歩くとシュッ、シュッ、シュッと音がでます。配偶者の方はこれに気づいていらっしゃると思います。ヒトの正常な歩行は踵から地面につき、つま先は最後に着地するものです。 普通の人はこれを無意識でやっています。ところがパーキンソン病になるとこれを無意識でやることが難しくなります。外で歩くときはある程度の緊張があります。人の目もあるし、ころんではいけないとの気持ちもあります。こうした緊張感が歩き方をよくしてパーキンソン病の方でも外では比較的上手に歩けるのだと思います。

ところが家に帰ると、その緊張感がいっぺんにぬけ、もう誰の目もきにすることはないという気持ちが無意識の中に働くのではないでしょうか?それで歩き方はすり足歩行になってしまいます。すり足歩行で歩くと絨毯の縁などにも引っかかって転ぶ事があります。パーキンソン病の患者さんは家の中で転ぶことが、外で転ぶより圧倒的に多いのです。打ち所が悪いと大腿骨頭の骨折などをおこして寝た切りになることもあります。従って、家でまずころばないようにしようとの固い決意が大切です。それには歩く時踵からつけてつま先は最後に床につけるという歩き方をもう一度練習して、歩く時はいつもこのように歩く事が大切です。ものを考えながら歩くことや、両手にものを持って歩くことは控えましょう。 これらのことは足に神経を集中することの妨げになります。つまり歩いているときはいつも足に神経をむけ、踵、踵と頭のなかでいいながら歩くことが大切です。どうしても踵からあるけない場合は、腿をあげて歩く練習をしましょう。この時腕を軽く振り、顎を軽く上げて進む方向をみながら歩くことが大切です。パーキンソン病では寝た切りになることはまずありません。骨折をしないように歩きましょう。