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冬の皮膚病―乾皮症性(皮脂欠乏性)湿疹

氏名 飯島 正文【皮膚科】
経歴 昭和大学名誉教授
山梨大学医学部皮膚科 非常勤講師
日本皮膚科学会元理事長

 

 冷え込んで乾燥するこの季節に急増する皮膚病が、乾皮症性(皮脂欠乏性)湿疹です。男女を問わず、特に高齢者に多く認められますが、40~50歳代の中年の患者さんも決して稀ではありません。
 病名の通り、この湿疹は冬季皮膚が乾燥してカサカサすることから始まります。乾燥した皮膚が強い痒みを誘い、この痒い乾燥皮膚を掻くことにより湿疹病変が作られ、さらに湿疹が痒みを増強させ、また掻くことにより湿疹がさらに悪化することになります。すなわち、乾燥皮膚→痒み誘発→掻破→湿疹誘発→痒み増強→掻破→湿疹増悪、という、痒みと掻破行為の悪循環、これをitch-scratch cycleと言います、が起こって湿疹病変が重篤化し、夜も眠れないと訴えて患者さんがクリニックの外来にお見えになります。

 治療の基本は通常の湿疹治療に加え、皮膚乾燥=乾皮症対策が重要です。湿疹にはステロイド外用療法が基本で、痒みには抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬内服を併用します。乾皮症には各種保湿剤、ヘパリノイド含有軟膏、尿素軟膏、ワセリンなどを用います。最も大切なことは日常生活指導で、風呂は温めを原則とし、汚れを洗い流す程度のやさしい石鹸使用にとどめてください。
江戸っ子の如く熱い風呂に入り、ナイロンの健康タオルでゴシゴシ擦って洗う垢すり行為は最悪です。冬の季節が来たら直ちに保湿剤(市販薬にも良いものがたくさんあります!)を用いた乾燥皮膚対策をお始め下さい。乾皮症の程度を改善する、掻いて湿疹化することを防ぐことが予防の第一歩です。加齢に伴って誰にでも老人性乾皮症は起こり得ますが、症状の程度は人により様々です。乾皮症は温度・湿度の急激な低下で悪化しますので、初冬の今こそが乾皮症対策の大事な季節です。