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女性の肺がん

氏名 宮元 秀昭【呼吸器外科】
経歴 秋田大学医学部卒業
社会福祉法人三井記念病院外科レジデント
国立がんセンタ-内視鏡部非常勤医師・外科研修医
社会福祉法人三井記念病院外科医局長
社会福祉法人三井記念病院呼吸器センタ-外科科長
順天堂大学医学部胸部外科学講師
順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科診療科長
順天堂大学医学部外科学助教授(呼吸器外科学研究室室長兼務)
順天堂大学医学部附属順天堂医院がん治療センター併任
一般財団法人脳神経疾患研究所附属呼吸器疾患研究所所長
総合南東北病院・南東北医療クリニック呼吸器センター センター長
NPO法人女性呼吸器疾患研究機構 設立 理事長就任
公益財団法人 日本医療機能評価機構 評価調査者委嘱

女性の肺がん

2018年の新規肺がん罹患者は約4万人。死亡者数も急増していて、同年は約2万2000人が肺がんによって亡くなりました。最近は女性の肺がんの増加が日本人全体の肺がん死亡者数増加の大きな要因となっています。

肺がんの一番の原因は「喫煙」であることは言うまでもありませんが、非喫煙者の肺がんが現在注目を集めており、環境、職業、大気、遺伝子、性が検討されています。非喫煙者の肺がんは現在、がん死の第7の原因で、世界で肺がん患者の25%が非喫煙者と推定されています。

女性の肺がんは先進国では、女性の社会進出もあり、喫煙と大きく関係しています。米国では過去42年間で男性の肺がんは36%減少したのに対し、女性は84%増加しました。肺がんに罹患した女性のうち約20%が非喫煙者でした。それに対して、女性非喫煙者肺がんの割合は東アジア・南アジアで高く、60-80%です。日本の女性は喫煙者も、非喫煙者も肺がんのリスクが高いのです。

喫煙以外では受動喫煙が大きな原因であることはご存じのとおりですが、「タバコと無関係なら肺がんにはならないのでは?」と考える女性も多いかもしれません。しかし、女性ホルモンが肺がんに関係することが指摘されています。女性ホルモンであるエストロゲンは、肺のがん細胞の増殖を直接促進したり、肺がん細胞中にあるエストロゲン受容体に、エストロゲンがくっつくことによってがん化を促進したりすることにより、肺がんの発生にかかわると考えられています。

国立がん研究センターは2022年、女性非喫煙者の肺がんは、女性ホルモンのエストロゲンが関係している可能性があるという研究結果を発表しました。40~69歳のたばこを吸ったことがない約4万2000人の女性を21年間追跡した結果、400人が肺がんに罹患し、うち305人が肺腺がんでした。閉経が早い女性に比べて、遅い女性の方が肺腺がんのリスクが1.41倍高く、初潮から閉経までの期間が短い女性と比べて、長い女性の方が肺腺がんのリスクが1.48倍高いという結果でした。正常な肺や肺がんの組織には、女性ホルモンのエストロゲンが結合する「エストロゲン受容体」があることから、肺がんの発生にはエストロゲンが関係していると考えられています。初経から閉経までの期間が長い場合、高濃度のエストロゲンに長期間さらされるため、それが肺がんリスクの上昇に関連した可能性があります。卵巣を摘出するなど外科的処置によって閉経した女性は、2.75倍も腺がんのリスクが上がったという研究報告もあります。外科的処置によって閉経したことで、急激にホルモンの変化が起きたり、術後のホルモン剤の服用などがリスクを上げている可能性があるとしています。

喫煙女性はもちろん、受動喫煙でタバコを吸ったことがなくても、初潮から閉経の時期が長い(36年以上)、あるいは手術により閉経した経験のある方は、ぜひ、呼吸器科を一度受診してみてはいかがでしょうか。

新型コロナと後遺症

新型コロナと後遺症

氏名 宮元 秀昭【呼吸器外科】
経歴 秋田大学医学部卒業
社会福祉法人三井記念病院外科レジデント
国立がんセンタ-内視鏡部非常勤医師・外科研修医
社会福祉法人三井記念病院外科医局長
社会福祉法人三井記念病院呼吸器センタ-外科科長
順天堂大学医学部胸部外科学講師
順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科診療科長
順天堂大学医学部外科学助教授(呼吸器外科学研究室室長兼務)
順天堂大学医学部附属順天堂医院がん治療センター併任
一般財団法人脳神経疾患研究所附属呼吸器疾患研究所所長
総合南東北病院・南東北医療クリニック呼吸器センター センター長
NPO法人女性呼吸器疾患研究機構 設立 理事長就任
公益財団法人 日本医療機能評価機構 評価調査者委嘱

新型コロナと後遺症

新型コロナウイルス感染症はすでに第7波に入りました。重症患者さんは明らかに減っており、恐怖を抱く人々も減っています。しかし、第6波で後遺症を訴える人が確実に増えています。若い世代では、学校に行けなくなったり、仕事ができなくなったりと、毎日の生活に大きな支障を受けている人たちがSNSで訴えています。今回の第7波もたいへん心配です。

世界保健機構(WHO)では、他の疾患の影響ではなく2か月以上続いている症状を「コロナ後遺症」と定義しています。だるい、息苦しい、頭がぼーっとして思考力が落ちるなどの症状が、感染から3か月以上経ってもみられ、海外では「long COVID」と呼ばれています。一度治まっても、再び現れることもあります。症状には様々な要因が絡んでいて、治療方法は定まっていません。ワクチン接種で後遺症の予防ができるという報告もありません。4人に1人が発症から半年経っても何らかの後遺症を抱えているという報告もあります。今回は、新型コロナの後遺症について、男性と女性では免疫の反応が異なり、症状の回復に差がみられるという、京都大学の上野教授の研究をご紹介します。

ウイルスは体に侵入すると細胞に感染しますが、「T細胞」と呼ばれる免疫細胞が、このウイルスに感染した細胞を狙って攻撃をするというウイルス排除の役割や、自分自身の免疫の暴走を抑える役割などを担っています。京都大学の上野英樹教授は、後遺症患者の血液からこのT細胞を解析し、その結果、強い倦怠感を訴える女性の場合、ウイルスを排除するT細胞とその働きを抑えるT細胞の両方が過剰に作られることで免疫が暴走していること、また、嗅覚や味覚障害だけが残る患者については、ウイルスを排除するT細胞が極端に少ないことを発見しました。感染した際に、ウイルスを排除するT細胞があまり作られない場合は、回復後もウイルスの欠片が体の中に残り、症状を引き起こすとみています。一方、男性ではウイルスを排除するT細胞があまり作られません。男性は新型コロナウイルスだけではなく、かぜの原因のコロナウイルスに対してもT細胞の反応が弱いということです。即ち、後遺症は女性のほうが出やすく、一旦症状が出れば、男性のほうが全身に散らばったウイルスのかけらを排除できないために、症状の回復が遅い可能性が示唆されました。

後遺症とワクチン接種の関連について、イギリス保健安全局は2022年2月15日に、ワクチンの接種によって後遺症が軽く、短期間で済む可能性があるという報告をしました。また、上野教授によりますと、女性の嗅覚・味覚障害や息苦しさ・動悸といった症状は、接種によって免疫のバランスが整うため早く改善に向かう可能性があるとのことです。一方、男性では改善がみられないので、少なくとも女性はワクチンを接種したほうが良いのではないでしょうか。

もしも、今この瞬間、後遺症に悩む方がいらっしゃれば、ご相談にお応えしますので、呼吸器外来を受診してください。

新型コロナと後遺症

コロナと女性とタバコ

氏名 宮元 秀昭【呼吸器外科】
経歴 秋田大学医学部卒業
社会福祉法人三井記念病院外科レジデント
国立がんセンタ-内視鏡部非常勤医師・外科研修医
社会福祉法人三井記念病院外科医局長
社会福祉法人三井記念病院呼吸器センタ-外科科長
順天堂大学医学部胸部外科学講師
順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科診療科長
順天堂大学医学部外科学助教授(呼吸器外科学研究室室長兼務)
順天堂大学医学部附属順天堂医院がん治療センター併任
一般財団法人脳神経疾患研究所附属呼吸器疾患研究所所長
総合南東北病院・南東北医療クリニック呼吸器センター センター長
NPO法人女性呼吸器疾患研究機構 設立 理事長就任
公益財団法人 日本医療機能評価機構 評価調査者委嘱

コロナと女性とタバコ

コロナ禍の中、ストレスにより「喫煙を始めた」あるいは「禁煙していたのにまた喫煙を始めた」「喫煙量が増加した」という人が増えているように感じておりますが、皆様の周りはいかがですか?

この度、コロナ禍のストレスにより「喫煙量が増加した」という女性が増えているという調査結果が発表されました。「受動喫煙が増えた」と感じている女性も多いとのこと。これは、コミュニティアプリ「みんチャレ」を展開しているエーテンラボが5月に発表した調査によるものです。その調査結果によると、コロナ禍により「喫煙量が増加した」という人の割合は、男性では21%、女性は38%と、女性は男性の約2倍でした。

さらに、国立がん研究センターが行った「新型コロナウイルスとたばこに関するアンケート調査」では、「新型コロナによるステイホーム・在宅勤務などで同居人の喫煙による受動喫煙は増えたか?」という質問に対し、10.6%が「増えている」と回答しています。対して、減っていると答えた人はわずか 1.6%でした。

コロナ禍の中、どうしても禁煙できない人が、電子タバコであれば従来のタバコに比べ安全だと思って、電子タバコに変える人が増えています。しかし、残念ながら、電子タバコであっても心臓病や脳卒中のリスクは高くなるという研究も発表されました。若者を中心に急速に普及している新型の電子タバコを吸っていると、細い血管の拡張機能が低下し、血圧や心拍数が上昇し、血栓ができやすくなる可能性があるという研究を、ヨーロッパ呼吸器学会が発表しました。

新型コロナウイルス感染症は、過度の炎症、血小板活性化、内皮機能不全、およびうっ血などにより、動脈系・静脈系の両方で血栓性疾患を起こしやすくなるとの報告が蓄積されてきています。また、アストラゼネカ社のワクチンでは、稀に珍しいタイプの血栓症が起き、男性に比べて女性、特に若い女性の方が頻度が高いと報告されています。しかし、上記のようにタバコによる影響も否定できません。

喫煙者が新型コロナウイルスに感染した際には、重症化しやすいというデータもあります。女性ばかりでなく、喫煙男性にとっても他人事ではないことを自覚すべきでしょう。禁煙したい人は、電子タバコに変えるのではなく、きちんと自覚をもって禁煙しましょう。どうしても禁煙ができない方は、東京クリニックの禁煙外来を受診してください。

コロナと女性とタバコ

女性に多い非結核性抗酸菌症とは?

氏名 宮元 秀昭【呼吸器外科】
経歴 秋田大学医学部卒業
社会福祉法人三井記念病院外科レジデント
国立がんセンタ-内視鏡部非常勤医師・外科研修医
社会福祉法人三井記念病院外科医局長
社会福祉法人三井記念病院呼吸器センタ-外科科長
順天堂大学医学部胸部外科学講師
順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科診療科長
順天堂大学医学部外科学助教授(呼吸器外科学研究室室長兼務)
順天堂大学医学部附属順天堂医院がん治療センター併任
一般財団法人脳神経疾患研究所附属呼吸器疾患研究所所長
総合南東北病院・南東北医療クリニック呼吸器センター センター長
NPO法人女性呼吸器疾患研究機構 設立 理事長就任
公益財団法人 日本医療機能評価機構 評価調査者委嘱

女性に多い非結核性抗酸菌症とは?

検診で胸部レントゲン検査上異常陰影を指摘され、「感染症であり、結核菌の仲間だが人にはうつさない」といわれる場合があります。結核菌の仲間で結核とは違うといわれるのは非結核性抗酸菌と呼ばれる菌で、土壌や水中、食物、動物(家畜を含む)などの自然環境に広く存在しています。結核菌は人に寄生する細菌(結核菌自身は環境中では生存できない)で、人から人に感染しますが、非結核性抗酸菌はもともと土や水など人間の身近な環境に生息していて、人から人に感染することはありません。

この菌に感染して起きる非結核性抗酸菌症は昔から存在した病気だと思われますが、結核に似た症状・病態だったので、結核が多かった時代には混同して考えられていました。しかし、結核菌とよく似ているが別の病原菌を原因とする病気であることが分かり、40年ほど前から「非定型抗酸菌症」と呼ばれるようになりました。近年は「非結核性抗酸菌症」という呼び方が一般的になり、次々と新しい非結核性抗酸菌が発見され、罹患率も増加しています。その中で、わが国で多いのが、Mycobacterium avium complex 菌による肺MAC症と呼ばれるもので、気管支を中心に病変を作るこの肺MAC症が最近わが国の女性に急増しているのです。

最初に記したようにこの病気は結核症と異なり伝染病ではありませんが、薬が効きにくく、なかなか治りにくい病気です。長い付き合いになり、徐々にひどくなると息切れや血痰を生じるようになり、あげくには大喀血や重篤な肺炎をきたすようになります。東京クリニックでは、多くのこのような女性の患者さんの経過を診ています。ご心配な方は呼吸器科を受診してください。

女性

コロナと女性と後遺症

氏名 宮元 秀昭【呼吸器外科】
経歴 秋田大学医学部卒業
社会福祉法人三井記念病院外科レジデント
国立がんセンタ-内視鏡部非常勤医師・外科研修医
社会福祉法人三井記念病院外科医局長
社会福祉法人三井記念病院呼吸器センタ-外科科長
順天堂大学医学部胸部外科学講師
順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科診療科長
順天堂大学医学部外科学助教授(呼吸器外科学研究室室長兼務)
順天堂大学医学部附属順天堂医院がん治療センター併任
一般財団法人脳神経疾患研究所附属呼吸器疾患研究所所長
総合南東北病院・南東北医療クリニック呼吸器センター センター長
NPO法人女性呼吸器疾患研究機構 設立 理事長就任
公益財団法人 日本医療機能評価機構 評価調査者委嘱

コロナと女性と後遺症

イギリスで発表された2つの研究で、40代と50代の女性に新型コロナ感染症での退院後、後遺症のリスクが高いことが示されました。多くは何か月も倦怠感や息切れ、ブレインフォグなどの症状が続いていると訴えています。

1つはPHOSPと呼ばれる研究で、中年の白人女性で、糖尿病や肺、心臓の病気などの基礎疾患がある場合は、退院後5カ月たってもコロナ後遺症を訴える確率が高かったという結果でした。

もう1つの研究は、50歳未満の女性は男性や50歳以上に比べ、基礎疾患がなくても倦怠感が2倍、息苦しさは7倍、記憶や動作や意思疎通の問題もより多かったという結果でした。

PHOSPの研究に参加した医師の1人は、男性と女性の免疫反応の違いが女性にコロナ後遺症に多いことの説明になるかもしれないと指摘。中年期の女性には自己免疫が多いことが知られています。

新型コロナウイルス感染者のうち、女性の方が男性より倦怠感や味覚障害などの後遺症が出やすい傾向があることが、日本の国立国際医療研究センターの調査で分かりました。とくに、倦怠感は約2倍、脱毛は約3倍。男女全体では4人に1人が発症から半年経っても何らかの症状を抱えていることも明らかになりました。私の専門である息切れなどの呼吸器症状に限って言えば、1か月以内 約 20%、100日ほど後約5%、半年後 約4%、1年後1.5%が後遺症として残っているという報告でした。

もしも、今この瞬間、後遺症に悩む方がいらっしゃれば、ご相談をお伺いしますので、東京クリニックの呼吸器外来を受診してください。

女性

睡眠とホルモン

氏名 松岡 健【呼吸器内科】
経歴 元東京医科大学内科学第5講座主任教授
元東京医科大学茨城医療センター長

 

睡眠無呼吸症候群{SAS}の男女比は9倍男性が多く、特に中高年、いわゆる働き盛りの男性に多いのですが、この年代はまさに生活習慣病やメタボリックシンドロームの適齢期であり、SASがこれらに一役も二役も係わっていることがわかってきたのです。


睡眠と男性ホルモンは関係が深く、男性ホルモンが低下すると睡眠障害になり、更には朝の活気がなくなります。我々の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、レム睡眠は浅い眠りで身体は深く眠っているのに脳が活発に動いている状態であり、急速眼球運動を伴う睡眠のことです。よく夢を見る時であり、一晩の睡眠で4-5回のレム睡眠が観測されます。そのレム睡眠は身体の基礎機能を調整している副交換神経が活性化して腸が動くのですが、男性自身も腸の親戚の内臓の一部として同様に反応し、無自覚の「夜間睡眠時エレクト」が起こります。これがいわゆる「朝のエレクト」で、性的に興奮をしたときの自覚的エレクトとは別のメカニズムであり、朝のエレクトは「男の生理」といわれ、健康のバロメーターでもあります。また性欲の低下やインポテンツもSASと関連していることがあるとされています。
 どうも最近、睡眠障害があり朝のエレクトがなくなってきた男性は男性ホルモンが低下していて、いびきをかくようでしたらSASかもしれません。ぜひ検査をしましょう。


『みちのく遅春』 中澤 満
(所蔵:総合東京病院)

女性の場合は男性より発症が少ないと言われていますが、それは女性ホルモンの一種であるプロゲステロンに呼吸中枢を刺激する働きがあるからです。しかし閉経後の女性はプロゲステロンの分泌が少なくなり無呼吸が起きやすくなるので注意が必要です。またSASの症状に倦怠感、頭痛、不眠、寝汗、などがありますが、更年期障害による症状に似ていることから、SASを見逃しやすく重篤化してしまうことがあります。
 小児のSASは近年増加し、特に肥満児が増加しているからと言われています。さて成長ホルモンは名前のごとく骨の発達を促進し成長に大きな役割を果たしています。「眠る子は良く育つ」と言われますが、成長ホルモンは夜間睡眠中に パルス状に多く分泌され、睡眠中の身体の修復や脂肪燃焼の促進効果が知られています。
 いずれにしても男女小児を問わずホルモン分泌異常の疑いがある場合はSASを疑い、簡易検査を行いましょう。
 ちなみにSAS と関連した物語でフランス人の劇作家ジロードの戯曲「オンディ-ヌ」があります。水の精オンディーヌがSAS にかかっている若者ハンスを愛するも、睡眠中に死んでしまうという劇です。日本では劇団「四季」にて長く上映されていました。その他イギリスの作家ディケンズの小説に出てくる太った少年は昼間から終始ウトウトして居眠りしているSASの患者さんです。それに由来した「ピックウイツク症候群」という名の病気が内外昨今問わず有名で、突然死を伴う怖い病気です。

文献1}諏訪邦夫 酸素は体になぜ大切か  1990年4月20日 講談社
文献2}熊本悦明 さあ立ち上がれ男たちよ 2016年3月15日 幻冬舎

たかが{いびき}されど{いびき}2

氏名 松岡 健【呼吸器内科】
経歴

元東京医科大学内科学第5講座主任教授
元東京医科大学茨城医療センター長

 

いびきの問題が取り上げられるようになったのは40年前のことで1976年米国ギルミノー博士が「睡眠時無呼吸症候群」「SAS」という病気を提案しました。SASは「眠ると息が止まる」という状態です。時間は長くありませんが10秒から20秒くらい、長くても1分以内です。またまた「睡眠無呼吸」とはいっても完全に無呼吸ではなく極端に呼吸の弱ったものを含まれます。
SASには2つのタイプがあります。
1つ目は呼吸努力はしているが気道が塞がる「閉塞型」、2つ目は本当に呼吸が停止する「中枢型」であります。閉塞型「Obusuturactive」の頭文字をとってOSASとも呼ばれます。SASの大半はOSASですが中高年の男性、特に肥満している人に多く見られます。呼吸の努力はしているのに。上気道『鼻から肺までの空気の通り道のうち、のどから上の部分』がふさがっているために無呼吸になることが原因です。SASと診断されるのはどんな場合でしょうか?

【睡眠時無呼吸症候群の定義】
Cに加えて、AまたはBがあること。
A、日中の傾眠(居眠りしやすいこと)がある。
B、下記のうち2つ以上あてはまる項目がある。
 ・睡眠中に息苦しくなり覚醒する
 ・睡眠中に頻回に覚醒する
 ・起床時に眠れた感じがしない
 ・昼間、からだがだるい
 ・集中力が低下している
C、睡眠検査にて、1時間に5回以上の無呼吸がある。
※AとBの自覚症状は、ほかの理由で説明できないことが条件です。
※Cは無呼吸のほかに、低呼吸やそれらにともなう呼吸努力関連覚醒も含みます。
*低呼吸は、吸気が確認されないわけではないが、1回の換気量が50%以下。

【アメリカ睡眠医学会による閉塞型睡眠時無呼吸症候群の診断基準】

上記のごとく診断には『無呼吸』だけでは不十分で日中の傾眠『居眠りしやすい』事などがなければSASとは診断されないということです。その他に無呼吸がなくても激しいいびきのために同様の症状を起こすことがあります。いびきが激しいことは狭い上気道での気流を確保するために大変な呼吸努力をしています。
この呼吸努力のため寝ていても何度も脳が起こされ、無呼吸を繰り返す人と同じように睡眠が分断され良質な睡眠が得られず、昼間に眠くなるのです。さてSASに該当する人はどのくらいいるのかは、正確には把握されていませんが、現在の医学会ではSAS患者は約200万人と言われています。しかし実際に治療を受けている人はわずか十数万人に過ぎません。
その理由は、患者さんが①いびきに気付いていない②病気だと思ってない③治らないと思っている④治療機関が少ない等です。男女比は9対1で圧倒的に男性に多いです。特に中高年に多く、まさしく生活習慣病やメタボリック症候群の適齢期です。
 近年SASは新幹線の居眠り事故で一躍世間の注目を集めた病気です。昼間の眠気の原因は睡眠中に繰り返される脳波上の覚醒反応です。無呼吸「気流が止まる」になると体内の酸素不足が進みそのままですと低酸素で呼吸をしないまま永遠の眠りについてしまいます。電車の中で日本人はよく居眠りしている人が多いですが昔住んでいたパリはほとんど居ません。日本は治安がよいですからスリは居ませんので安心して居眠りするかもしれませんが、SASの可能性がありますよ。

たかが{いびき}されど{いびき}1

氏名 松岡 健【呼吸器内科】
経歴

元東京医科大学内科学第5講座主任教授
元東京医科大学茨城医療センター長

 

皆様昨夜よく眠れましたか?よく眠れた方は今日の生活は活力に満ちたものになりますし集中力も生まれます。ちょっとしたことでいらいらせずにすごすことができます。このような{安眠}が得られることはとても幸せです。しかし眠りたくて布団に入っても眠れないという方は{不眠症}です。不眠症とは違って眠っている間に呼吸が止まるのは{睡眠時無呼吸症候群}SAS があります。SAS の患者さんはほとんどの方がうるさい{いびき}をかいてますが。いびき。SASは日本人の死因には出てこなく1位は{がん}ですが心疾患。脳血管疾患が2位。3位です。いびきSAS はなぜ問題にされるのでしょうか?なぜかといえば心筋梗塞、脳梗塞、の原因の1部になるからです。

 図に示したように自覚症状がないのに高血圧症がなぜ問題になつているのか、脂質異常がなぜ問題になるか?それはいびき「SAS」を放置すると心筋梗塞、脳梗塞の原因の1部になるからです。糖尿病、喫煙も同じです。SASも同じなのです・すべて血管が血液と接している内皮細胞の機能障害をおこし、最終的な結果として動脈硬化性血栓症である心筋梗塞、脳梗塞にいたるのである。
 いびき人口は中高年男性で約6割 2000万人といわれてますが、毎日つまり習慣的にいびきをかいている場合は健康的とはいえません。そもそも睡眠中は体の酸素要求が減りいびきをかかない人でも呼吸が弱くなり換気量が低下します。従って体に取り込まれる酸素の量が少なくなります。いびきをかく人は睡眠中の呼吸に問題があるゆえより酸素不足に陥っている可能性がある。いびきこそ「不健康の証」である。
 このように睡眠中に正常な呼吸ができないために必要な酸素が取り込めないのを総称して「睡眠呼吸障害」 そのなかでも主には「睡眠時無呼吸症候群」「SAS」なのです。