新型コロナウイルス感染症に対するPCR検査について

2020.09.14

氏名 稲葉 佑介【総合診療科】
経歴 群馬大学医学部卒業
東京女子医科大学病院 総合診療科入局
東京女子医科大学病院 医局長

患者さんからいただくお問い合わせの中に、「濃厚接触歴も症状もないが、新型コロナウイルス感染症が心配だからPCR検査を受けたい。」「(職場などで)陰性を証明してほしいと言われた。」という内容があります。
確かに、無症状の患者さんがいらっしゃることや、風邪と見分けのつかない軽症例もしばしば見られることが報道されているため、このようなお問い合わせをされる気持ちはよく分かります。
しかし、「PCR検査で陰性であっても新型コロナウイルスに感染していないことの完全な証明にはならない」ということをぜひ理解していただきたいと思います。
PCR検査の診断能力は、感度70%と言われています。
この解釈として、すでに感染が判明している人100人に検査を行っても70人しか拾い上げられない程度の見落としがある検査なのです。
そもそも、「何かがないということ」を証明する「悪魔の証明」は難しいものです。
例えば、21世紀の今も、「お化けがいないこと」は証明されていません。
検査を受ける過程での感染のリスクもありますし、偽陰性(実際には感染しているにも関わらず、検査で陰性となったケース)の方が感染を拡大させてしまうリスクも問題となります。
こうしたPCR検査の限界を理解した上で、不安や曖昧さと賢く付き合うことがwithコロナ時代には求められると考えます。