ドクターコラム 女性に多い非結核性抗酸菌症とは?

呼吸器外科 宮元 秀昭

2022年1月13日掲載

検診で胸部レントゲン検査上異常陰影を指摘され、「感染症であり、結核菌の仲間だが人にはうつさない」といわれる場合があります。結核菌の仲間で結核とは違うといわれるのは非結核性抗酸菌と呼ばれる菌で、土壌や水中、食物、動物(家畜を含む)などの自然環境に広く存在しています。結核菌は人に寄生する細菌(結核菌自身は環境中では生存できない)で、人から人に感染しますが、非結核性抗酸菌はもともと土や水など人間の身近な環境に生息していて、人から人に感染することはありません。

この菌に感染して起きる非結核性抗酸菌症は昔から存在した病気だと思われますが、結核に似た症状・病態だったので、結核が多かった時代には混同して考えられていました。しかし、結核菌とよく似ているが別の病原菌を原因とする病気であることが分かり、40年ほど前から「非定型抗酸菌症」と呼ばれるようになりました。近年は「非結核性抗酸菌症」という呼び方が一般的になり、次々と新しい非結核性抗酸菌が発見され、罹患率も増加しています。その中で、わが国で多いのが、Mycobacterium avium complex 菌による肺MAC症と呼ばれるもので、気管支を中心に病変を作るこの肺MAC症が最近わが国の女性に急増しているのです。

  • 最初に記したようにこの病気は結核症と異なり伝染病ではありませんが、薬が効きにくく、なかなか治りにくい病気です。長い付き合いになり、徐々にひどくなると息切れや血痰を生じるようになり、あげくには大喀血や重篤な肺炎をきたすようになります。東京クリニックでは、多くのこのような女性の患者さんの経過を診ています。ご心配な方は呼吸器科を受診してください。