膵臓の病気って?
膵臓の病気というと、まず膵臓癌が思い浮かぶ方も多いかと思います。日本では、膵臓癌は増加傾向でこわい病気ですが、膵臓の病気としては膵炎も油断ができない病気です。膵炎には急性膵炎と慢性膵炎がありますが、今回は急性膵炎について最近の知見をご紹介させていただきます。
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膵臓は胃の裏側、体の真ん中にあります。膵臓には膵液という消化液を作り、膵管を通して十二指腸に送り出すという働き(外分泌)と、血糖値に反応し、インスリン・グルカゴンなどのホルモンを作り糖代謝のコントロールを行う(内分泌)働きがあり、それぞれ膵臓の外分泌細胞と内分泌細胞が担当しています。
急性膵炎とは
健康診断や人間ドックで膵機能検査というと血中アミラーゼ検査があります。アミラーゼはデンプンを分解する消化酵素ですが、急性膵炎になり膵臓の細胞が破壊されると、血中にこの酵素が流れ込み、血中アミラーゼの値が高くなります。
急性膵炎は近年増加傾向で、この30年で5倍以上に増加しており、年間8万人近くも発症しています。男女比は2:1と男性に多く、発症年齢は平均60歳くらいです。
膵液が自身の膵臓を消化すること(自己消化)で膵炎は起きますが、一旦膵臓組織に壊死が起こると悪循環の連鎖が始まり、重症化し、致命的になる場合もあります。約四分の一の患者さんが重症化するという報告があります。重症例は充分な治療を受けても死亡することがあります(最近の致命率は6.1%)。
急性膵炎は軽症で済むこともありますが、重症化するかどうかの予測は難しいため、入院し、悪化しないかどうか観察する必要があります。
急性膵炎の症状
急性膵炎の場合、腹痛で発症することが多いですが(92%)、腹痛にもいろいろな原因があるため、様子を見てしまうことも多いのではないでしょうか。 膵炎では、臍の辺りから背中に痛みが来ることが多いです。また、立っていられないほどの激しい痛みのことが多いです。痛み以外には、嘔吐・発熱などの症状もありますが、腹痛が強かったり、これらの副症状を伴うようならば、早めに医療機関を受診すべきです。
急性膵炎の原因
急性膵炎は、暴飲暴食がきっかけとなることが多いので、アルコールを大量に摂取した後の強い腹痛の場合、急性膵炎を疑わなければなりません。
胆嚢結石(胆石)を持っている方は食事やアルコールと関係なしに急性膵炎を起こすことがあります。胆石が胆管より落下し、膵管に入り込んでしまうことにより、膵炎を発症します。胆嚢内に小さい胆石を複数持っている方に膵炎は多いようです。
また、頻度は多くはありませんが、高脂血症でも中性脂肪が高い方も急性膵炎をおこすリスクがあると言われています。加水分解された中性脂肪がカルシウムと結合し、血管内で微小血栓となり、潅流障害(かんりゅうしょうがい)を起こし、膵炎が発症するとも言われています。さらには、薬剤が原因の場合ありますし、原因がわからない膵炎もかなりの比率で見られます。
急性膵炎は命にも係わるこわい病気で近年増加しています。まずは暴飲暴食を避けることが第一です。胆石を持っている方、特に大きさの小さい胆石が多発している方は一度専門医と相談し、胆嚢切除を考えても良いかもしれません。中性脂肪の値が1,000mg/dlを超える方は心疾患の予防も兼ねて治療を受けることをお勧めします。
さいごに
急性膵炎はこわい病気ではありますが、注意をしていれば発症を防ぐことはできると思います。節度を保った生活習慣を続け、快適な生活を送りましょう。